Polyrhythm ポリリズム

Polyとは多数の、多量のという意味です。
音楽辞書ではポリリズムは「異なる種類のリズムを対照的に、複数の声部で同時に組み合わせる方法」とありました。
リズムという言葉は日常でもよく使われますが、まず、ここでは音楽におけるリズムという言葉を定義する必要があるでしょう。

 リズムとは音量・音程・音色などの諸関係が組み合わされアクセントが生じ、それが周期的に現れる現象といえます。
最も基本となる単位は拍(beat)、そして拍が組み合わされたものを拍子(meter)と呼びます。

*ト音記号の横のCは、Common(一般的な)のことで、4/4拍子を意味します。


 もし、何らかの単一の音が等間隔の時間で連続して鳴っていたとしても、音量や音程にまったく変化がければばリズムの周期が
感じられないことになります。例えば、雨だれが何拍子かを判断することが難しいように。
音量、音程の変化を端的な言葉にすれば、アクセントと言えるでしょう。


例1のように強弱をつけて机を叩いたら、音程変化なく、そして楽音(音楽で使われる音程のある音)でなくとも
4拍子を感じることができます。これが、音量の変化(強弱)によるリズムの表現です。


例1


タン タン タン タン タン タン タン タン


例2は音の強弱が、かりになくとも音程(ドレミ・ドレミという周期)によって3拍子を感じるはずです。


例2


 リズムの定義のおおよそができました。そして異なるリズムを同時に演奏するのがポリリズムです。
上記の他にも音色の変化によるリズムの表出も考えられますが、ここでは音程変化によるリズムを使ったポリリズムの話を
中心にしていきたいと思います。


可能性

 拍と拍子という概念でポリリズムを考えたとき、最小単位である拍のポリリズムと、異なる拍子のポリリズムという
2つのパターンが考えられます。

1.最小単位である拍のポリリズム
  
 譜例1がわかりやすい例で、異なる拍分割が同時に進行しています。(8分音符と3連符)  


譜例1


譜例2 ショパン「幻想即興曲」

 この曲は2/2拍子です。下声部では基本の拍に6つ音が入る6連符、上声部では8つ入る32分音符のポリとなっています。
うねるような音響です。


譜例3 ブローウェル「黒いデカメロン」

 キューバの作曲家、ブローウェルのギターのためのかっこいい楽曲。「黒いデカメロン」の第2楽章です。
上声部が基本の拍に3つ入る3連符の連続に対して、下声分では16分系リズムが絡んでいます。

 


2.異なる拍子のポリリズム
 
 音程の周期を利用して異なる拍子を同時に進行させます。
譜例4は便宜上4拍子の拍子記号で書かれていますが、上段では3拍子が流れています。
譜例5は便宜上3拍子の拍子記号で書かれていますが、上段では4拍子が流れています。(あえて上段から演奏)
 


譜例4

譜例5

 最後に7/8拍子と4/4拍子を同時に演奏する例です。
7/8拍子は1小節に8分音符が7こ入ります。4/4拍子は1小節に8分音符が8こ入ります。
7と8の最小公倍数は56です。この2つの拍子を同時にスタートさせた場合、小節線がかみ合わずに進行したとしても
8分音符を56こぶんを演奏した後の57こ目には、お互いの周期の頭を一致させることができます。
つまり、7/8拍子は8小節、4/4拍子は7小節の周期で同時進行できるということ。(譜例6a・6b)


譜例6.a 7×8=56

譜例6.b 8×7=56

パソコンのスピーカーではほとんど低音が聞こえないので、ヘッドフォンで聞いてみてください。

きもちわるい?

 ポリリズムはとても興味深いものです。
ピカソ*に代表される芸術表現であるキュビスム(立体派)は、モティーフを解体し再び正面と側面を接合するという方法です。
2次元のキャンパスの上には本来、見ることの不可能な視点が描かれています。
ポリリズムはこの多重性、多層性のようなものとの共通するように思えます。
4拍子の音楽を聴いているのに、聴取の視点(?)を変えると、3拍子に聞こえたり、
3拍子の音楽がいつのまにか、4拍子になっていたりと・・。
また、異なるリズムを重ね合わせることによって独特の不思議なうねりも生まれます。
愉快なトラップの可能性が、たくさんあるでしょう。

ピカソ*  パブロ・ピカソ(1881〜1973) スペインの芸術家